マウスピースの素材には、用途に応じていくつかの特徴が異なるものが存在しています。ここでは、マウスピースに使われる主な素材の特徴について紹介します。
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目次
- マウスピースの素材に関して
- マウスピース素材①EVA樹脂
- マウスピース素材②SmartTrack
- マウスピース素材③ポリウレタン
- マウスピース素材④ポリエチレン
- マウスピース素材⑤その他
- まとめ
マウスピースの素材に関して
マウスピースは、スポーツ中の歯の保護や歯並びの矯正、顎や歯の保護だけでなく、睡眠時無呼吸症候群の治療など様々な利用目的に使われています。
そして、それぞれのマウスピースの利用目的に応じた素材が使用されており、例えば歯並びの矯正治療に用いられるマウスピースであれば、長時間装着しても違和感が少なく、口を開けても目立たないことなどを重視した素材が選ばれています。
どのマウスピースにも共通して言えるのが、マウスピースは口腔内に装着するため、毒性が無いだけでなく口腔環境に悪影響を及ぼさないことが確認されている素材であることも重要です。
また、利用目的によっても異なりますが、一定期間、同一のマウスピースを装着することが多いため、破損や変形、素材の変性などが最小限になるような、マウスピース自体が丈夫な素材であることは求められます。
マウスピースは利用目的に合わせて、特徴を持った素材で作製される必要があります。現在、主にマウスピースの素材に使われる素材には、以下のようなものがあります。
マウスピース素材①EVA樹脂
EVA(Ethylene-Vinyl Acetate:エチレン酢酸ビニル)樹脂は、エチレンと酢酸ビニルを繋げて作製する素材です。この素材の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
高い強度を示す
素材の強度の指標として、引裂強度、衝撃強度、ストレスクラッキング性などがありますが、EVA素材はいずれも高い特性を有していることが知られています。そのため、マウスピースとして高い強度のものを作製することが出来る素材であると考えられます。
マウスピースに適した外観
EVA素材は透明性が高く、着色が容易であることが知られています。そのため、マウスピースを作製する際には様々なカラーリングをラインナップすることが出来ます。このことから、目立ちにくいマウスピースを希望される場合は透明なものを選んだり、ご自身の気に入った多様な色のマウスピースを選んだりすることが可能です。このようにして、EVA素材の高い透明性や着色の容易さは、マウスピースの選択の幅を広げるために適している考えられます。
軽量化が可能
EVA素材は軽いことも特徴の1つとされています。マウスピースは、口腔内に比較的長い時間装着しておく必要があるため、装着感が悪いと装着の継続が難しくなってしまいます。軽量化が可能なEVA素材であれば、重量感を覚えることのない装着感の良いマウスピースを作製することが出来るとされています。
柔らかい
EVA樹脂は、柔軟であることも特徴の1つとされています。マウスピースは、丈夫であることも重要ですが、その一方である程度の柔軟性が必要とされています。あまりにも硬いマウスピースだと、歯や顎のみならず口腔内にダメージを与えてしまう可能性があるだけでなく、装着時の痛みを生じさせてしまうことが考えられます。そのため、EVA樹脂のような柔らかさを持った素材をマウスピースに用いることで、マウスピースごとの用途に沿った目的を達成することが出来ます。
無毒である
マウスピースは口腔内に装着しておく必要があるため、毒性が問題になります。その点、EVA樹脂はアメリカのFDAから認可を取得した素材の1つであるため、安全性が担保されています。そのため、EVA樹脂で作製されたマウスピースは、高い安全性を持っていることが示されています。
マウスピース素材②SmartTrack
この素材は、インビザラインと呼ばれるアライン・テクノロジー社が販売する人気の矯正用マウスピースに用いられています。
従来、インビザラインのマウスピースにはポリウレタンが用いられていたようですが、数年ほど前からはSmartTrackに変更となっています。SmartTrackには、以下のような特徴があります。
歯への力のかかり方が一定
目立った特徴の1つとして、マウスピースの交換時期が来るまでの歯への力のかかり方が一定であることが挙げられています。SmartTrack以外の素材では、交換時期が来る頃には、装着し始めの頃と比べて半分以下にまで歯を移動させる力が低下すると言われています。これは②週間前後でマウスピースの交換が必要な理由の1つでもあります。
これが、SmartTrackを用いたマウスピース「インビザライン」であれば、交換期間内でも力が落ちることがなく、1015人から得た臨床試験データで、それが認められています。
弾力性の改善
ポリウレタンと比べて、SmartTrackでは弾力性に改善が認められています。具体的には、マウスピースの装着時に歯への密着度が高くなり、よりフィット感が増しています。さらにその結果、歯への力のかかり方が正確さを増しています。
マウスピース素材③ポリウレタン
この素材は、元々、多くのマウスピースに用いられている素材です。また、身近な生活用品、スポンジや衣服などにも利用されています。ポリウレタンは以下のような特徴があります。
柔らかい
ポリウレタンは比較的やわらかいため、装着感もよく、金属アレルギーの方でも使用が可能な素材です。
表面が滑らか
ポリウレタンは、表面が滑らかで、薄い加工を施すことが可能な素材とされています。
経時劣化がある
ポリウレタンの弱点の1つとして、素材が合成された瞬間から分解が始まり、様々な要因によって分解が加速していきます。その結果、時間の経過とともに、徐々にもろくなりやすくなっていきます。
マウスピース素材④ポリエチレン
安価なマウスピースに見られる素材がポリエチレン(PE)です。ポリエチレンは、プラスチック素材の中において最も原料価格が安く、加工しやすい素材のため、包材など様々な場面で使われています。以下のような特徴があります。
吸水性が少ない
口腔内は水分が多く、吸水性が高い素材をマウスピースにしてしまうと、素材の変化をもたらす可能性が高くなります。そのため、ポリエチレンのような吸水性の少ない特徴を持つ素材は、マウスピースに適しているとされています。
生体安全性が認められている
超高分子量ポリエチレンと呼ばれる、簡単に言えばポリエチレン同士をさらにたくさんつなげた素材は、人工骨や人工関節、義肢などにも用いられています。そのため、生体における安全性が高いことが認められた素材とされています。
マウスピース素材⑤その他
ここまでに挙げた素材の他に、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラートグリコールなどが用いられたマウスピースもあります。いずれの素材にしても、前述したような口に入れて問題ない素材、一定基準以上の強度などの、前述したようなマウスピースに必要な特徴を持ったものが選ばれています。
まとめ
マウスピースに用いられる素材には様々なものがあります。いずれの素材でも、それぞれのマウスピースの用途・目的に応じたものが選択されて作製されています。
また、いくつかの種類の素材のマウスピースが存在していることで、特定の素材に対するアレルギー(例:ポリウレタンアレルギーなど)がある場合でも、その他の素材のマウスピースを使えば、マウスピースを装着することが可能になります。もし、アレルギーの心配や、どの素材を用いたマウスピースを作製してもらえるかを知りたい場合、マウスピースを作製する前に、歯医者さんに相談することが良いと考えられます。